一般社団法人 北海道まちづくり協議会

特集記事 THE座談会

2020年5月6日(水)

THE 座談会 in 東川町(1)〜 ゲスト紹介 〜


北海道のほぼ中央に位置する「写真の町」東川町。大雪山の雪解け水がゆっくりと時間をかけて流れてくる地下水を生活水とする、北海道で唯一上水道の無い町。大雪山連峰「旭岳」の麓で、雄大な自然景観に恵まれ、豊かな水と肥沃な大地の恵みと共に暮らしています。「自然」と「人」、「人」と「文化」、「人」と「人」それぞれの出会いの中に感動があり、私たちの暮らしにとって大切なものはこの町にあります。(東川町HPより)


左から〈ゲスト〉東川町 東川スタイル課 菊地伸さん、ヨシノリコーヒー 轡田紗世さん、道総研建築研究本部 佐々木優二さん 〈司会〉当協議会 森哲子

ゲスト紹介—————————————————

(森) こんにちは、司会をつとめる北海道まちづくり協議会の森哲子です。今日は、THE座談会in東川町ということで皆様にお集まりいただきました。私たち北まち協議会では、「THE座談会というホームページ連載企画」をこれまで3回実施してきました。ホームページで広く読んでいただくというスタイルです。3回とも札幌市内で開催してきたのですが、そろそろ札幌から地域に出てみようではないかということで、白羽の矢を東川町さんに立てさせていただきました。
まず初めにお互いによくご存知だと思いますけれど、改めてご紹介をさせていただきます。
東川町 東川スタイル課 課長 菊地伸さん
(株)ヨシノリプランニング コミュニケーションマネージャー 轡田紗世さん
北海道立総合研究機構 建築研究本部 研究職員 佐々木優二さん
よろしくお願いします。 まず、皆さん自己紹介ということでお話いただければと思います。レディ ファーストで轡田さんからお願いします。

(轡田) よろしくお願いします。
私は、東川町の北町という所でヨシノリコーヒーというコーヒー豆屋を本店という形で経営させていただいています。東川町には、2014年11月から完全移住しまして、子供と夫と3人で、こちらは自宅兼店舗という形で経営させていただいています。最初は、私一人で営業していたのですが、いろいろなコーヒーのブームと東川町さんのブームが重なり非常にお客様の数が増えたというのが気になりまして、昨年9月に株式会社ヨシノリプランニングという社名で法人化させていただきました。
今は、社員が3名ほどおりまして、バイトの方も合わせますと10名程の人間で仕事の場を一緒に守っているところです。

(森) お子様は今おいくつなのですか。

(轡田) ついこの間、5歳になりまして、ちょうどここに越してきたときに彼女はまだ2ヵ月目に入るところだったので、本当にこの店は子どもとともに成長しているというような場所で、ヨシノリコーヒーも合わせて5年目になります。

(森) お子様と東川町での起業の年、誕生年が一緒なのですね。

(轡田) そうなのです。一緒に育てた感じで双子のような感覚です。ここも私自身がおかみ業みたいな感じの役割でやらせていただいています。

(森) お嬢さんですか。トイレを借りたらキティちゃんがいましたから(笑)。

(轡田) はい、娘です。子どもの名残が…。
当時は、1階のここのスペースは自宅の居間として使っていたのですけれども、今はもう完全に2階に家族が住むようなスタイルにしていて、1階はどなたでもご利用いただけるような場所としています。

(森) 最初は、入口の辺りで豆売りをやっている程度だったのですか。

(轡田) そうなのです。私は全然こんな状態になるなんて夢にも思っていなくて、本当に主人の趣味をちょっと私がカバーする的な感覚の軽い考えでいました。ですから本当に最初は大変だったのですが、東川町さんの宣伝のおかげもありまして、少しずつお客様が増えてきました。その後、たくさんの方々に来ていただくようになって、「これはいかん!」と覚悟をしまして、主人も3年前に27年勤めていたサラリーマンを辞めるという強い決断をしました。

(森) 最初は、紗世さんがこの場所で一人でコーヒー豆を売っていて、その時からもうスペシャルティコーヒーだったのですか。

(轡田) スペシャルティコーヒーをその頃から販売していました。

(森) なるほどね。ありがとうございます。
続きまして、轡田さんが引っ越してこられた東川町役場・東川スタイル課の菊地さん、お願いします。

(菊地) 東川町役場の東川スタイル課の菊地といいます。よろしくお願いいたします。
役場の職員ということで、まず東川町の紹介からと思います。東川町は、大雪山旭岳を擁している抜群に自然環境が良いというところがまず条件としてあって、更に、旭川空港や中核市の旭川市に近いという立地条件の良さ、それらが東川町の魅力に繋がっていると思います。
地下水の町ということで全国にもあまり例がなくなったのですけれども、東川に住んでおられる人は全ての家庭、会社もみんなが地下の水を飲んでいます。

(森) お風呂も地下水、大雪の水ですか。

(菊地) お風呂もトイレも。ですから我々は、お風呂もトイレもミネラルウォーターと言っているのですけれども、それがひとつ大きな魅力となっているということだと思います。
そのような魅力から、最近は人口が少しずつではあるのですけれども継続的に増えている状況で、轡田さんを含めて移住者の方も来ていただいています。
私どもが感じる東川町の魅力の基本となっているのは、この田園景観だと思います。基幹産業が農業で、昔から農業者が農地を守り営んできたという環境の上に暮らしがあって、町が子育てサポートなど色々な環境を整えて、そこで暮らすことに魅力を感じて移住者の方が増えている。そんなことが今の状況につながっているのではないかと感じています。
私の東川スタイル課の仕事ですが、実は、2018年に新設された課で私は今年の5月から東川スタイル課に来ました。主にふるさと納税制度を活用した東川株主制度、私どもは、いわゆる寄付を投資と呼んでいますが、投資を皆さんからいただいて東川の事業に活用しよう。更に、交流人口の増加対策を基本として皆さんの応援をいただこうというような仕事です。
※[東川スタイル=人口8,000人のまちが共有する未来の価値基準]

(森) 株主さんになっていただくということは、利益が出たら配当されるのですか。

(菊地)利益が出たら配当というよりも、ルールに基づく配当というのが多いと思うのです。例えば、投資をいただくことで、我々は優待と呼んでいるのですけれども、優待があったり、あとは配当に変わるものがあったり、時期的なことだったり、東川町ルールをつくって還元をするというような考え方です。
最近力を入れているのは、企業との連携というところです。この町が今後発展していくためには色々な企業の方とつながって東川町の中で色々な活動や事業を行っていただく。それを住民の方と連携してやっていただくだとか、そういうことが必要だと思っているので企業との連携事業を進めています。
我々の課は仕事の範囲がないといいますか、企画の新しいことはうちの課でやるみたいなスタンスなので、気がついたことだったり必要なことがあれば次々とやっていくというスタンスです。産業の振興も含めて、新たな視野で町の振興に取り組んでいる課です。

(森) 新しい企画を生み出すと同時に、他の課でも新しい取り組みとなるようなことにはタッチしていくという感じですか。

(菊地) うちの役場は、従前から横の連携を強めてやってきているので、決して縦割りではないのです。きっかけとしては、どの課でも先に取り組んだことに関係する他の課の協力が必要であれば連携をしていくというスタンスです。
例えば、私どもの東川スタイル課が先にどこかとつながってきっかけをつくったとしても、それを他の課が担ってまたやっていくとか、そういうことは常にやっています。

(森) では、会議は常に円卓を囲むみたいな感じで連携されるのですか。

(菊地) そうですね。会議をやることもありますし、うちはスケジュール管理というシステムを入れているのですけれども、誰か必要な職員のスケジュールが空いていればオーケーかノーかではなくて、求められたら必ずそこにスケジュールを入れる、というルールなのです。入れられても文句は言わないのです。それでスケジュールが共有されていて、あとは案件があれば「これこれについてどうですか」ということをそのシステムを使って知らせれば、みんなそれにコメントしていくという仕組みになっています。

(森) コメントのレスポンスは結構きますか。

(菊地) 即座にです。案件にもよりますけれども。それで終わらないようなことは会議をもって集まって話をするという、そういうスタンスをとっています。

(森) スタイル課に行かれる前は何を。

(菊地) スタイル課の前は、2年間企画総務課長をやっていました。

(森) いずれも間口の広い部署ですね。

(菊地) どちらかというと企画総務課は、堅い仕事で間口が広い。東川スタイル課は、柔らかい仕事で間口が広い。そういう感じですかね。

(森) 今日お伺いした東川スタイル課のある施設は、名前は何でしたか「せんとぴゅあ」。なかなかおしゃれで居心地の良さそうな空間ですね。ありがとうございました。
では佐々木さん、よろしくお願いいたします。

(佐々木) 道総研建築研究本部というところが旭川にありまして、そこで研究員をしている佐々木と申します。あまり見えないと思うのですけれども、たぶん僕が一番若いと思います。僕が老けて見られることが結構ありまして、まだ20代半ばぐらいです(笑)。

(森) お若いですね(笑)。

(佐々木) 道総研をいろいろと使ってくださいというのがまず営業部分としてあって、移住・定住やまちづくりの研究を行っている研究所です。
その一環で昨年度、東川町でなぜ移住者が増えているのか。なぜ移住して起業している人が増えているのかというのが非常に不思議でならなかったのです。そこで、東川町さんにご協力いただき、ヨシノリコーヒーさんにもいっぱいお手伝いいただきながらアンケート調査などを行い、なぜ入ってきているのかという分析を昨年度やっておりました
その研究自体は一年間の研究だったのですけれども、そこから今年度もこういう機会とか他の機会でも色々東川町さんとは関わりを持たせていただいているというような状況です。僕も研究をしていた当時よりも新しいことが常に起きている町なので、来る度におもしろいです。長く見ていきたい、研究していきたいなと僕個人では思う町です。東川の紹介になってしまいましたけれども。僕自身は研究者です。

ゲストの皆さん。左から菊地伸さん、轡田紗世さん、佐々木優二さん

 


次回は “なぜ、東川町へ向かったのか” というテーマで轡田さんが東川町に移住するきっかけや現在までを中心にお話しいただきます。
(2)なぜ、東川町へ向かったのか〜始まりは夫のロマン を読む