『シンガポールベイエリアの再開発事情について』
~国策でIR(カジノ)を導入した背景と現状の視察報告~
講師/濱谷雅弘氏(北海道工業大学 人間社会学科 教授)
去る7月25日、平成24年度では2回目となる、第10回まちづくりゼミナールが参加者20数名で開催されました。講師には、元再開発コーディネーターであり当協議会顧問の北海道工業大学 濱谷教授を迎え、「シンガポールベイエリアの再開発事情について」と題して写真や動画を交えて解説いただきました。シンガポールの独裁国家としての成り立ちから水資源の不足問題、車の価格を異常に高くし台数抑制していること、そのために逆にタクシー代の安いことに驚かれたことなど、ユーモアを交えながらの楽しいお話で始まりました。
マリナベイ・サンズは、カジノを中心施設に導入し、ホテル、コンベンションセンター、ショッピングモール、ミュージアム、シアター等を配置し、当初予算を1千3百億円も上回る総工事費5千億円もの大規模複合リゾートとして完成しました。
シンガポールにおいてカジノ導入の流れを考えると、背景にはアメリカ型カジノがマカオなど、世界中に拡大したことがあり、観光産業の低迷、都市再生の必要性から、複合リゾートという新しい概念を取り入れた結果と考えられます。
メイン施設のホテル3棟は、地上57階、高さ191m、最大52度の傾きを持つ非常に大きく奇抜なデザインで、韓国のゼネコンが受注しました。
この3棟を結ぶ屋上テラス「サンズ・スカイパーク」は長さ340m、北側に張り出している展望台は片持ち梁として世界最長の65mであり、ここの施工については日本のJFEが橋梁の技術を活かして行ったとのことで、日本の建築技術の高さを証明するかのようでした。
スカイパークの中央部分は、宿泊客のみが利用できるプールは「インフィニティプール」と呼ばれ、水面が永遠に続くような視覚的効果が施されています。
このホテルに泊まり、このプールで泳ぎ、真下の道路を走る夜のF1レースを観戦してみたいなあ…と思ったのはきっと私だけではないでしょう。
また、これら全体の建設状況をまとめたプロモーションビデオが圧巻であり、1週間をかけて探し出された講師の努力が報われたのではないかと思いました。
次に、おまけの部分でしょうか、学生たちとの活動フォトレポートも楽しませていただきました。
手稲区の手づくり提灯「夏あかり」には16小学校が参加し、学生も100名ほど参加するという「街づくりは人づくり」を実践され、滝川の紙袋ランターンフェスはNPO主体から市民主体へと変化し、達成感や感動が得られ、江差町の祭りでは、参画することで学生の眼の輝きが変わっていった話など、「ありがとう」「また来いよ」という『もてなしの心でまちづくり』という言葉も印象的であり、それぞれが素晴らしいまちづくりに繋がっていることを確信しました。
今回のゼミは、実務者目線のレポートと教育現場での実践活動の様子を組み合わせたものであり、大事な建築部分の施工や海水の淡水化技術等、日本の技術の高さや貢献度を再認識しましたし、まちづくり実践活動では、今後を担う若い世代の行動力、創造力及び協調性等を養成している見ごたえのあるものでした。
懇親会は出席者が少なく、少し寂しい気もしましたが、講師を中心として質疑応答プラスアルファで大いに盛り上がり、有意義な時を過ごしました。最後に、出席した若い学生達がこれらのことを活かし活躍されることを、大いに期待したいと思います。
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<今回のレポーター・プロフィール>
フクタカ工業株式会社 加納隆一氏
仕事の領域:特定建設業
好きなこと:ゴルフ、音楽鑑賞、蕎麦打ち等
北まち協議会の仲間と今後やっていきたいこと:
新たな出会いを大事にして、飲食しながら楽しく歓談、時にはカラオケ等できたらいいかな‥‥と。
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