一般社団法人 北海道まちづくり協議会

北まちブログ

2011年12月12日(月)

[レポート]第6回まちづくりゼミナール

炭鉱の記憶で地域の再生―地域資源の活用とエリアマネジメント

11月25日、札幌国際大学観光学部観光経済学科教授であり、NPO法人炭鉱の記憶推進事業団理事長の吉岡宏高氏を講師に迎え、産炭地地域再生の取組みについてご講演いただいた。氏自身は北海道三笠市のご出身で、同法人を15年前に立ち上げ、岩見沢を拠点に地域マネジメント活動を精力的に取り組んでおられる。

かつては北海道の基幹産業であり、黒ダイヤともてはやされた空知の石炭産業は、昭和35年から45年をピークに、その後のエネルギー政策転換により急速に衰退する。しかしながら、戦中、戦後の日本経済にとって石炭は重要なエネルギー源であり、電力安定化は戦後日本の高度成長に大きく貢献したという。北海道開発の歴史を見ても、石炭輸送手段としての鉄道敷設や満州等への積出し港である小樽港と小樽運河の整備、室蘭の製鉄に石炭が欠かせなかったことなど、石炭産業が北海道に果たした貢献度を熱く語られた。 ただし、閉山後の地域再生について、国の莫大な資金を投入しながらも成果を得られなかった過去を憂える。今の活動は、そのような反省を教訓に地道に続けているという。 また、時代は前後するが、ドイツやロシア、イギリスといった旧産炭国が文化遺産として炭鉱を保存整備する状況が、写真を交えながら興味深く説明された。

最後に、法人の活動内容が具体的に伝えられた。2005年の「炭鉱遺産サミット」開催に始まり、産炭地域活性化戦略の立案、最近では解体の危機にさらされていた奔別炭鉱選炭施設などの炭鉱(やま)の記憶を手がかりに、過去の歴史を振り返るとともに、それを未来の手がかりとすべく力を発揮されている。炭鉱遺産をステージにしたアートプロジェクトや炭鉱集落との交流など、地域内外の人達に知的好奇心をそそるこれら活動報告に、参加者から大きな拍手が沸きあがり、1時間半の講演は閉会した。

《レポート&写真:株式会社 日本設計 札幌支社長 目黒  裕史、編集:事務局》