第2回 人口減少はよくないこと? ―――――――
(岡本)司会
「人口減少時代をかんがえる」というテーマというところで、『人口減少は、よくないことですか』というところから伺ってみたいと思います。
(押野)
10年前くらいから仕事をしている中で、人口減少がはじまるという話が周りで言われ、人口減少を見据えた何かをやっていかなければいけない時代が必ずくる、 とずっと言われていました。
10年経って、最近になって、やっと地方創生とか、 本格的に皆がそれを意識しはじめているという感じになっています。 個人的には、周りを見ていて、人口が減ってきたということを実感していないのが正直なところです。
良いことか、悪いことかと言われたら、まだわからないという ことが正直なところです。たまたま札幌に住んでいて、職場も札幌で、地下鉄があ って、店も近くにあるということから、特に日々の生活にも大きな支障はないかなというところはあるのかなとは思います。
でも、減ることは良くないのかなと思う。なんとなくしかイメージできていませんが。 仕事で自治体の方と話していても、人口減少という言葉を使って説明しているのですけれども、どうしても、それが どう影響してくるのかというところが正直、自分の中では完全に消化しきれていない部分があります。まだ、勉強不足、実感不足かなと思います。
(川尻)
人口が減っている、業務に限らず、地方に仕事で行く。定期的に毎年行きます。
日々の変化はそれほどないのですけれども、人口減少、例えば、1年後、2年後、 だんだんとまちの商店街の店が、馴染の店が閉まったところが出てくる。
最近、特に思うことは、その頻度というか、速度、加度的なまちの衰退。衰退は言い過ぎですが、人通りが減ってきているということは、定期的に通っているからこそよく わかるということを感じます。それが、この5年くらい、すごい速度でまちが変化してきているということは感じるところです。
(岡本)司会
それは、同じまちに、ある一定期間コンスタントに通っているからこそ見えてくるものがあるということですね。
(川尻)
そうですね。それが、逆にその土地に住んでいない人間なので、半年に1回、1年に1回とか行くわけです。そうすると、当然半年や1年では変わらないものもあるのですけれども、ここ数年行くたびに、だんだんまちの変化の速度が速まってきているなということを感じます。
たぶん、押野さんがおっしゃったように、我々は、今札幌に住んでいて、まだまだ人口の流入もしばらくは続いて いる。そうすると、便利ですし、何不自由ない中で人口減少という実感はわかないと思うのです。周りを見渡せば当 たり前のように人が流入しているところもあれば、流出しているところもある。そこの変化がここ数年著しくおきているのではないかということを、感覚的には思っているところです。
(岡本)司会
生沼さんは、地方の経験がありますよね。
(生沼)
あります。人口減少がもっとも進んでいるといわれている夕張に学生の頃から関わっていて、5年間くらい通っていました。 減っているということはよくわかります。
人口減少と高齢化ということもあるのですけれども、話す場として町内会に行くとか、地域で「懇談会を開きますよ、来てください」と呼びかけて、来るのは高齢者が多いです。そこで将来の話をしても、 俺たちは死ぬから関係ないよというような人もいれば、行政批判をするような人もいます。
人口減少しているというよりは、まちに若い人がいないのだなということを感じます。忙しくて来られないということもあるとは思うのですけれども、感じます。札幌に住んでいますけれども、人口減少を感じるところがあって、地元の小学校の学級数が減ったということを感じます。建て替わってしまったのですけれども、すごく学校が小さくなったなということを感じます。
(川尻)
逆に、子どもの総数も減っているのですけれども、同じ札幌市内でも、子どもというか、家族の定住が偏っていると思うのです。私は、来年子どもが小学校入学です。ホームページで学校教育委員会が現在数を発表している。
要は、 各小学校とか中学校のクラスの総数をみていくとすごくよくわかります。中央区の啓明とか伏見とか柏というのは、ひと学年8クラスとか9クラスとかあるのです。南区の藻岩とか、澄川中になると3クラス。場合によっては、2ク ラスとかです。その偏りがすごく出てきたなということは、クラス数でなんとなく感じます。
(押野)
それは、わかります。学校を卒業して20年以上が経っているので、最初に、団塊ジュニア世代ですという話をしたのだけれども、自分たちの時代は、小さくても最低でも5クラスはあった。子どもは、ひとクラスの中でも40人 から50人いて、それが何クラスもあるということが普通だった。今、川尻さんがおっしゃるように、ひと学年2クラ スとかですね。
6月頃に小学校で運動会をやるじゃないですか。なんか、運動会をやっているんだという感じで見るのだけれども、 意外と子どもよりも応援している親のほうが多い。ギャラリーのほうが多いな。言われてみれば、確かにそうだなと 思って。子ども一人に両親とお爺ちゃん・お婆ちゃんで4人。そうすると、それがいくら20人くらいのクラスであ ったとしても、ギャラリーは、かける4になるんだなと思った。
(川尻)
今の日本の年金構 を表しているような。何人で支えているんだという感じですね。
(生沼)
小学校の運動会でいうと、毎年、積丹町に運動会のお手伝いに行っています。学生時代からやっている手伝いを社会人になってもやっているのですが、積丹町の小学校は、児童数は7人とか5人とか3人なのです。運動会はできな いのです。紅組2人、白組1人とか3人という感じだったりするのです。
だから運動会には、まちの人が参加します。子どもたちと一緒に運動会をまちのイベントとしてやるので、お婆ちゃんも参加するし、地域のお父さん・お母さん、親戚の人が係ってやる。親戚だけの競技もあるし、それはそれでいいなと思うのです。人口減少が進んだ小学校の運動会は、さみしいなと思うかもしれないですけれども、そういう機会があることはいいなと思います。
(押野)
小学校の運動会というよりもまちのイベント、地域のイベント。
(生沼)
学校の先生も2人とか3人しかいないので、用具の出し入れも我々が手伝ったり、漁師町なので漁師の人が出したり。地域の借物競争、司会の人が「参加する人」と呼びかけるのです。来て来てという感じで。そういう姿はいいな と思いますけれども。
全然都市計画を持っていないまちなのですけれども、北海道では結構多いと思うのです。
(押野)
半分は都市計画を持っていないですよね。
(生沼)
そういうまちでも、以前から人口減少は進んできているので、今更と思っている人もいるとは思うのです。
私は、かつてはこんなにあったということを知らない世代で、もうすでに減っているくらいの世代が、人口減少して いることを感じるくらいなので、大人の方はもっと振り幅が大きく感じているのかなとは思います。
(つづく)
■次回は Uターン、Jターンをテーマに議論を掘り下げていただきます。