一般社団法人 北海道まちづくり協議会

特集記事 THE座談会

2017年2月2日(木)

連載企画 THE 座談会2《第3回》現場を通して感じる人口減少

title-20162

前回:第2回 学生たち…受け身から働きかけに

《第3回》現場を通して感じる人口減少 ■■■■■■■■■■

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

《押野》 議論がテーマ2「現場を通して感じる人口減少」に入りつつあるのかなと思います。
今、まさに大場さんがお話しのようにまちづくりの仕組みも変ってきているのではないかということです。言い換えると、キーマンが変化してきているということ。
今までは行政が仕掛けていた。それが、全く予測しないところに新たな価値観と仕組みでキーマンが生まれてくるということでしょうか。久新さんに聞いてみたいと思うのですが。自己紹介の中で、最初の10年間現場にいて、今は営業にいるということで、20年ほど建物をつくる、インフラをつくるお仕事に携わっておられますが、変化はありますか。

《久新》 あります。僕らの仕事というのは、基本的にお客さんから発注されて行うので、世の中の景気、そのとき求められている建物のニーズによってその仕事の量も変りますし、その内容も結構変ってくると思います。この20年仕事をしていて最初の頃はどうだったかなと思うと、20年前は、結構新しい学校をつくっていました。忘れてしまいましたが、米里高校だったかな、新しく学校をつくるとか、その頃、そういう話はそこそこあったのが、今は全くないです。工事はありますよ。たとえば耐震・改修工事や、古くなりすぎたから建替えるというような工事はあるけれども、新しく学校ができるということはほとんどないというのが大きく変わってきた部分と思います。
昔はなかった高齢者施設、老人ホームはあったかもしれないけれども、高齢者マンション、サービス付き高齢者住宅というようなもの、20年前はなかったものが今は当たり前というように変ってきている。あとは、マンションですね。マンションは、今も当然あるのですけれども、すごく減りましたね。

《岡本》 それは、戸数自体が減ったということですか。

《久新》 どれだけ減っているのかなと思ってマンションデベロッパーの人に聞いたのです。そうしたら今の札幌市は、毎年の供給戸数は1,800戸くらいなのです。10年前はどうだったのかというと5,000戸もあったのです。
そんなに減ったのですかという話をしたら、それにはいろいろな要因がありまして、建設単価も上がったからマンションを建てても売れなくて、戸建住宅のほうにという人の流れもある。いろいろな要素がある中でも、人は増えていない、減っているということで、人口減少が影響しているということをすごく感じます。

《押野》 マンションなどで3LDKとか4LDKとか、大きい間取りではなくて、どちらかというと2LDKのほうが売れるとか。そういうことも時代の変化としてあるのかなと漠然と思ったりすることがあるのですけれども。

《久新》 まち中に近いところは小さいのが多くて、郊外になると、やはり3LDKが主体だという話を聞きます。4LDKの比率は昔に比べて減っているのかな。
郊外では2LDKではなくて3LDKぐらいほしいねという方の割合は多いです。ただ、2LDKの小さいものは独身の方とかのニーズは増えていると思います。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA《岡本》 バスでしか行けないところにも昔はマンションが建っていましたよね。今は、もうそういうのは…

《久新》 ほとんどありえない状態です。地下鉄の駅から徒歩8分が限界ということを聞いたことがあります。札幌では10分は歩かないようです。
東京のほうは違うみたいですけれども。地下鉄の駅はどこでもいいのかといったら、それもだめで、どこと具体的に言うと怒られてしまうかもしれませんけれども、南平岸辺りはだめだとか。(笑)

《押野》 区でいうと、どこが人気ですか。

《久新》 私の知る範囲では、一番人気はやはり中央区です。中央区にマンションを建てられる土地がなくなってきたことと、土地もかなり高騰してきたので、ちょっとつらいねというところがあって、創成川イーストといわれる街に近いエリアが次に魅力があります。そこもいい場所がなくなってきたら、少し外に出ようかということになって、たとえば手稲の駅前だとか、今は新札幌エリアが注目を浴びつつあるということです。
でも、そこまでが限界で、どこの駅でもいいかといったらそうでもない状況です。

《押野》 時代の変化というもので、当時はこのエリアが人気だったけれども、今はこっちがというようなことがあるのでしょうね。

《久新》 とにかく街中でないとなかなか売れない。買う人が減ったということもあるでしょうし、便利なところじゃないと、というニーズも昔よりは高まったのではないですか。

《岡本》 壊す仕事というのはあるのですか。

《久新》 壊す仕事もありますけれども、マンション系はないです。ほとんど聞かないです。

《押野》 建替えはどうですか。

《久新》 マンションの建替えは、ほとんど聞かないです。マンションを壊しているという話は、賃貸はあるかもしれませんけれども分譲マンションを壊しているという話は聞かないです。
他の普通の建物はあります。倉庫を壊す、公共施設の建物を建替えるということはありますけれども、分譲マンションはほとんど聞かないです。
建替えが難しいからではないでしょうか。

《岡本》 では、バスでしか行けないマンションはつらいですね。

次回につづく「《第4回》まちのコンパクト化とは?」

 

第1回 まちなかの変化,人の変化
第2回 学生たち…受け身から働きかけに
第3回 現場を通して感じる人口減少
第4回 まちのコンパクト化とは?
第5回 暮らし方の選択肢は多様である方がよい
第6回 これからのまちづくりに必要なこと~キーワードは「ごちゃ混ぜ」
第7回 混ざる、混ざり合うことが、はじめの一歩
第8回 北まちが担っていくべき役割