一般社団法人 北海道まちづくり協議会

特集記事 THE座談会

2017年3月13日(月)

連載企画THE座談会2《第6回》これからのまちづくりに必要なこと キーワードは「ごちゃ混ぜ」

前回:第5回 暮らし方の選択肢は多様である方がよい

《第6回》これからのまちづくりに必要なこと
キーワードは「ごちゃまぜ」
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《押野》 テーマ3「これからのまちづくりに必要なこと」の話に入り混じってきているという気がするのですけれども。次第に関係なくフリーに語っていただいてもいいのかなと思っています。

これからのまちづくりに必要なこと、まさに高齢化が進んでいく中でまちづくりに関して住まい方、コンパクトなまちづくりということが出ているのですけれども、今のお話を聞いた中で答えが完結に近づいているのかなという気がするのですけれども。

《岡本》 プラスの話題ですけれども、今年の初夏ぐらいに建築学会の関係で金沢を訪れることがあって、そこで「シェア金沢」という施設に行ってきたのです。

そこで伺った話をでは、とにかくキーワードは、ゴチャ混ぜだと言っていました。高齢者のサ高住もありますし、児童養護施設もあります。アトリエ付きの学生住宅のようなものもあって、妊婦さんの出産までをサポートする家などもあるのです。それが全部、平屋建ての戸建のような雰囲気の建物が散らばって建っているのです。

緑と芝生に囲まれてすごく豊かな空間になっている。こちら側はサ高住、こちら側は子育て、こちら側は障害児というような形の分割配置ではなくて、住棟がグチャグチャに混ざっているのです。お互いの様子を見ることができたりする。

何が大切か、そのゴチャ混ぜの良さを言っていたのですが、サ高住や障がい児が集まって住んでいる中に食事のサービスが必要だったりする。それを近隣に住んでいるおばちゃん方がパートで手伝っている。

《押野》 買い物はどうしているのですか?

《岡本》 シェア金沢の中には、商店街のようにお店が並んでいるところがあって、そこに高齢者の人や障がい児、大人、大人になりかけの人たちがアルバイトや店番の手伝いなどに行って、社会参加もできるし周辺の雇用にもつながっている。中のゴチャ混ぜだけではなくて外も混ぜて一緒にゴチャ混ぜなんだという話をしていました。

これは結局、今までは高齢者向け、大きなマンションのようなものをドンとつくるというような形。補助金の関係や建築費云々という別の仕組みでどうしてもそうならざるをえないのかもしれないですけれども、小さな規模で街の中に点在させて、食事の提供などに代表されるようなところに関われば、誰でもできることの部分で関わっていく。そうすると自然と自分の役割もできるし、住んでいる人にも交流の機会が生まれるということがある。

そのキーワードはゴチャ混ぜというのは、すごく印象的です。コンパクトにする、プラスゴチャ混ぜにするということが重要なのではないかと思って帰ってきました。

《久新》 よくわかっていないのですけれども、何もない空き地にそういう施設をゴチャゴチャ建てたということですか。

《岡本》 そうです。昔、結核患者のサナトリウムだったところです。元がサナトリウムなので木も敷地の中に生えていて、木は伐採せず建物を壊して、小さいスケールで組み直しているという感じです。


「Share(シェア)金沢」は、平成25年4月にオープン。社会福祉法人佛子園(昭和35年開設、理事長 雄谷良成)が病院跡の敷地に住まいや文化施設などを配置して、一からつくり上げた街。いろんな人が混じり合い、共に暮らす−「私がつくる街」をコンセプトに計画段階から地元の自治会や町民館などの人たちを巻き込み実現。子どもや大学生、高齢者まで、世代や障がいの有無を超えて、さまざまな人が一緒に暮らし、フリーマーケットなどの企画や施設の運営など、暮らしに関わることは住民参加で決定。地下600mから湧き出す天然温泉やカフェは、地元の人など誰もが気軽に利用でき、同じ館内に高齢者や障がい者のためのデイサービス、訪問介護の機能も備えている。街の中心部にはサービス付き高齢者向け住宅と学生向け住宅が隣り合って建ち、家庭菜園や農園で一緒に土いじりを楽しむこともできる。周辺には高齢者が交替でレジを打つ共同売店やクッキング教室、クリーニング店などのほか、近所の子どもたちが走り回る全天候型グラウンドなどがある。

「Share金沢」http://share-kanazawa.com/index.html


《大場》 日本版CCRCにおける国の狙いに、首都圏から地方に高齢者を移住させようというのがあるのだろうけれども。ある意味で、それだけではなくて地域の活性化、それと結びついたようなつくり方をしていかないとだめだね。

《岡本》 そう思いますね。

《大場》 それには、先程も言ったように、人口構造も変ってきているのだったら、よく言うように高齢者も女性も活用していくという形で地域が関わり合ってやっていくという形でのものであればいいと思うのです。

《岡本》 その商店の人たちも選抜されているのです。ただ物を売りに来るのではなくて、何かアロマテラピーの技術があるのだったらアロマテラピー教室をセンター施設でやってくださいとか、自然学校のようなことをやっている人は、敷地の中で子どもたちを集めて、もちろん周りの町内会の子どもたちも集めてキャンプファイヤーみたいなことをやってくださいとか。自分たちが得意としていることを地域、そのシェア金沢の中でちゃんと提供して、客を集めるだけではなくて自分たちの技術がその中や外も含めて良くなるように動いてくださいね。それに同意できないのだったら入れませんという。

《大場》 それは、ほとんど首都圏などからの移住者ですか。

《岡本》 金沢市の中心部からみたいですね。普段からその中に、お店の人はその中に住んでいない場合もあるのですが、おもしろかったです。

先程、大場さんはCCRCとおっしゃっていましたけれども、やっている人、運営の責任者の方は、CCRCと呼ばないでくれとすごくこだわっていました。そんな仕組みよりももっと前からやっているし、高齢者中心ではなくて、子どもと高齢者とゴチャ混ぜということにすごくこだわっているのです。

《大場》 今、国が言っているよりもずっと前からやっているということですね。

《岡本》 それは熱いものを感じました。

《押野》 CCRC自体は、アメリカなどでやっていたものを日本に持ち込んでということだから、そこにはプライドがあるのではないですか。

《久新》 民間とはいっていますけれども、たぶん全然違うよということなのでしょうね。

《押野》 そこで仕事もちゃんとあって、ただ住むだけではなくて仕事もあって、そこで経済の流れが生まれて、よい環境で住みやすくて。

次回につづく「《第7回》混ざる、混ざり合う〜はじめの一歩」

 

第1回 まちなかの変化,人の変化
第2回 学生たち…受け身から働きかけに
第3回 現場を通して感じる人口減少
第4回 まちのコンパクト化とは?
第5回 暮らし方の選択肢は多様である方がよい
第6回 これからのまちづくりに必要なこと~キーワードは「ごちゃ混ぜ」
第7回 混ざる、混ざり合うことが、はじめの一歩
第8回 北まちが担っていくべき役割