一般社団法人 北海道まちづくり協議会

特集記事 THE座談会

2018年5月11日(金)

THE座談会 3《第2回》ライフスタイルの変化と交通の利便性の関係

《第2回》 ライフスタイルの変化と交通の利便性の関係

《辻井》
さて、一巡したところで、仕事やまちづくりの面からお話を伺います。
市橋さんはマンションデベロッパーを対象に事業提案をやっているということですが、マンションニーズなどについて今の状況を教えていただけますか。

《市橋》
ここ近年、リーマンショック以降は、供給戸数は非常に落ち込んでいる。今現在、ここ数年でいくと大体札幌市内1,500戸前後ですね。

《辻井》
リーマン以前の頃はどれくらいですか。

《市橋》
おそらく2,000戸以上はいっていましたね。ピークは、確か4,000戸くらいはあったと思います。

《辻井》
半分くらい落ちてきているのですね。

《市橋》
今は1,500戸前後になっていますね。今、年間に20から25棟くらいマンションが建つのですけれども、ほぼ半分は中央区ですね。

《辻井》
まだ中央区がのびていく状態ですか。

《市橋》
最近は、琴似も非常にマンション傾向が多いですね。目立っています。手稲や新さっぽろですとかは、今年2物件くらい出たかなという感じです。

《辻井》
それは、都心の中で、言い方は悪いですけれども、旨みのあるところが少なくなってきているということでもあるのでしょうか。

《市橋》
限られたパイの中で20社くらいのディベロッパーさんがいらっしゃいますからパイの取り合いになっていると思うのです。大体皆さん知っているような情報がベースになっているので、狙いが重複しますので、そこから少し出ようという傾向も出てきているかもしれないです。

《辻井》
琴似は旨みのあるところが増えてきているのですか。

《宮坂》
そうですね。本当に多いですね。

《市橋》
案件が多いですよね、琴似。

《辻井》
地域の人口は伸びているのでしょうか。
人口が伸びているということは、まちの力みたいなもの。アクセスが良く買い物が便利とか、教育が整っているとか、魅力度が高くなっているのですか。
その辺、ずっと琴似のまちづくりに関わってきてどうですか。多分、住宅だけをやればいいという話ではないと思うのですが。

《宮坂》
伸びていますね。確実に。
今、住宅がすごく増えてきているので、そろそろ住宅以外の施設をちゃんと整えていかなければ、住宅がかえって空いていくのではと、私個人としては思っています。
ただ、再開発で収支、お金のことを考えますと、住宅以外で何があるのというところが難しいところだと思います。手っ取り早いのは住宅になってしまうという。

《辻井》
逆に住まいの環境とかが魅力に繋がっているのでは?琴似は元々交通のポテンシャルが非常に高いところが大きいと思いますね。

《宮坂》
たとえば、私は東京にしょっちゅう行くのですけれども、琴似から千歳まで直行なのです。再開発エリアのマンションに住んでいらっしゃる方は、空中歩廊があるので、それこ
そ冬は東京の靴のままコートもなく東京のままの恰好でマンションに行けるという、その利便性は札幌では殆どないかなと思っています。

《辻井》
今、琴似の例も出していただきましたが、都市が縮むのではないかという時代に差し掛かってきて、札幌などはまちの機能が地下鉄沿線にどんどん集約されて、デベロッパーの動きも、都心と地下鉄沿線に攻めていくというような流れが益々加わってくるのかな?というふうに伺っていました。
保坂さんは、デベロッパーさんと住宅以外も含めていろいろなお仕事をされていると伺いました。その辺のトレンドとかお客さんのニーズを聞かせていただけますか。

《保坂》

私は2009年のリーマンショック後に入社しまして、その頃は、やはり世界的に景気が悪いせいか、あまり工事物件はなかったのです。
やはり最近は、サービス付き高齢者住宅が非常に物件としては多いです。特に、先程もおっしゃられたように地下鉄沿線ですとか、札幌駅からJRで数駅の利便性の良い所に建てられる傾向が強いかなと思います。
あとは、やはり病院さんですね。病院も地下鉄ですとか利便性の良いところに、大きな土地を確保して少し大きくしたいというお客さんが多いですね。

《辻井》
それは増床したいという。

《保坂》
そうですね。利便性の良い場所で増床したいというお客様も多いです。
少子高齢化とは逆行してしまうのですけれども、保育園ですとか幼稚園、子ども園の新設が非常に多いのは最近のトレンドかなと思います。共働きが普通になっていますからね。

《辻井》
たとえば、その保育園にしても地下鉄沿線とか立地の良いところを求められるのでしょうか。

《保坂》
新規物件ではそういう傾向はあるかと思いますが、保育園に関しては、割りと今ある物の増設になますね。新設というよりも昔からあったものを新しく、大きくしてという形が多いので。そういう意味では、地下鉄沿線という流れとは逆行しているのかなと思います。

《辻井》
市橋さんの扱われる物件は、大体新築が多いというお話しも伺いましたけれども、マンションの老朽化とかが社会問題として出てきていますけれども。営業先としては、古いマンションのリノベーションと新築マンションの割合というのは。

《市橋》
おそらく新築10対に対して中古0に近いくらい。マンションのリノベーションというのは殆どないですね。ガスに仕事が来ていないだけかもしれないです。勝手な判断で言ってしまいました。

《辻井》
まち中ですと都市ガスさんの守備範囲の話ですから、実際に意外と進んでいないのかもしれませんね。マンションのリノベーションはどうですか。

《市橋》
マンションのリノベーションは、あまり聞かないですね。
あるデベロッパーさんは、賃貸マンションを一棟買い取って、未入居のお部屋からリノベーションをかけて、そして分譲で売るということはされていますけれども、あまり多くはないですね。

《辻井》
琴似のスガイボウルが別の用途に変わったとか。

《宮坂》
スガイボウルさんが出られまして、娯楽施設ではなくて、それこそうちの主人が関わったのですけれども、結局、住まいだけだと夜の人口が増える。昼も人口が増えるためには企業さんに来ていただいてオフィスビルにするということを主人が考えまして、スガイボウルさんの後に札幌市の西市税局とAVCテクノロジーさんに入っていただいたり。新しいところの一番最後に実施した再開発は、東芝さんに入っていただいて。そのビルには、それこそ先程おっしゃいましたけれども、保育園とか子供の英会話教室とか事務所系とか、そういう系統にも色々入っていただいて、そういう面では多様化してきているのかな。

《辻井》
すごいですね。

【THE座談会3】

次回につづく「《第3回》 まちの昼の顔と夜の顔、そしてエリアでの暮らし方」

《第1回》 座談会メンバー、それぞれのまちの今
《第2回》 ライフスタイルの変化と交通の利便性の関係
《第3回》 まちの昼の顔と夜の顔、そしてエリアでの暮らし方
《第4回》 モノやコト、居住空間をシェアするということ
《第5回》 地域コミュニティとコミュニケーションの昔と今
《第6回》 エリアごとの個性をいかすエリアリノベーション
《第7回》 計画力、企画力、住民力を一緒に磨いていく