一般社団法人 北海道まちづくり協議会

特集記事 THE座談会

2020年7月13日(月)

THE 座談会 in 東川町(6)〜子育てサポートもブランド力〜


● 東川町というまちのブランド〜立地の良さと文化づくりの相乗効果 —————————————————

(森) これまでお仕事の話を轡田さんに聞かせていただきましたが、日々の暮らしについてお話を伺いたいと思います。お子さん5歳でしたね。東川町は、福祉の面に力を入れていらっしゃる。特に子育てに力を入れていると聞いています。ご自身は日中子どもさんは保育園ですか。

(轡田) 保育園です。「ももんが」さんにお願いしていて、子どもが6ヵ月ぐらいのときからずっとお世話になっています。土日も、保育園がもう一つ「こまくさ」さんというところがあって、そちらは土日・祝日も見ていただけるので、基本的には子どもはそちらのほうにお願いして。気晴らしと言っては変ですけれども、母たちも近くに住んでいるので、まだ元気で仕事もしているので、好きなときに孫をあやしにというような感じで来てもらったりして、仕事をしながら働くお母さんの課題になるような時間帯はそういう色々な方々の援助をお願いしています。

(森) 菊地さん、農家さんが多いですね。その方々のためにも保育園は充実しているのですか。そのように政策としてやっていらっしゃるのですか。

(菊地) そうですね。元々保育所という形態、一日中預かることができる保育所。あとは、幼稚園という午前中だけ主に幼児教育を中心に預かるような施設。二つに幼児施設は分かれるのですけれども、うちは平成14年から幼保一元化という形で、一つの施設で同じ幼児教育を受ける環境を提供すると仕組みでやっています。今の松岡町政になってからは、預けやすさをどうつくるのかというところで保育料も工夫をして下げるということもやっていますし、一時保育だとか延長保育ということも充実させるということで積み重ねてきています。
何のためにやっているのかというと、やはり町民の方々が安心して生活するためにが原点です。共稼ぎの方も多いですし、安心して子育てができる環境を整えるということで自然な形でやってきた結果がこうなっているということだと思うのです。

(森) 役場の職員さんも含めて共稼ぎの世帯がどれくらいでしょうか。

(菊地) 割合がどうだというのは、私は数字的にも押さえていないですけれども。一つ例を言うと、幼児センターは、今200名を超えて定員ギリギリまでいるのです。人口が伸びていることはあるのですけれども、過去から比べると増えています。
小学校でいうと、学童保育という事業をやっているのですけれども、20年前頃だと40名~50名だったはずなのですね、預かっているお子さんが。今は150名を超えていますから。

(森) 約3倍ほどですね。

(菊地) それは、環境が良くなったので預けるというふうになっているところもあるのですけれども、今の時代のご夫婦の生活の環境とか、ライフスタイルなどで共稼ぎでというところに変わってきていますよね。

(森) 先程、半分は世代交代をしていらっしゃるというお話でしたけれども、その世代交代をされて流入といいますか、入ってこられる世代の中心世代というのはどれくらいのイメージなのですか。

(菊地) まさに子育て世代なのですよ、入ってきているのは。ご夫婦でいうと30代・40代。

(森) 一番ほしいところですね。

(菊地) そうなのです。
それが顕著に表れているのが、うちで生まれる子どもの数、赤ちゃんの数というのは、平均すると一年に50名弱です。出生届が東川町内の住所で出される数です。

(森) 比較するとどのように増えていっているのですか。

(菊地) 50名弱の出生数に対して小学校に上がるときの入学者数が70名を超えるぐらいなのです。ということは、1.5倍弱の数にいわゆる子どもが増えています。ということは、その世代が東川町に転入してきているということ。これがここ数年ずっと続いているのです。

(森) それは大きいですよね、ファクターとしてね。自主的ブラックにも励みが出ますよね。

(菊地) 成果は出ていると思います。

(森) 先程、東川町文化ギャラリーでしたか、そこを覗いたら町民文化祭みたいなのをやっていて、子どもたちの作品展示もありました。小学校が3つ、東川一、二、第三まで?

(菊地) 小学校は全部で4つです。東小、東川小というのが中心校で、あと一、二、三です。
(森) 東川小学校、第一、第二、第三と4つ。それは多いですよね。

(菊地) この町の規模と面積でいうと多いと思います。周辺の第一、第二、第三はだいたい20名から40名ぐらいまでの全校生徒の規模です。そういう小規模校ですけれども。

(森) 東川小学校というのは役場から近いところにある学校ですね。

(菊地) 役場の奥のあのでかい小学校です。それが中心校です。

(森) これからも教育関係は充実させていこうという感じですか。

(菊地) 施設を充実させるということよりも教育環境、中のソフトとか中身ですよね。それも今でもやっていますけれども、そこが重要なのではないかなという気はしますけれども。子どもたちがどのように育つのか、その環境をどうつくっていくのか。

(森) 今日見た作品展もすごいよね。絵がうまいし。構図なんかもカッコイイじゃんというようなものもあり、「やっぱり写真の町だね」と語り合っていました。そういう子どもたちも写真の町とかで自分たちの町が話題になると、写真作品なども見る機会は多いのですね。

(菊地) そうですね。自然にふれるということでいうとそういう機会も多いですし、町の中で色々なイベントを介してふれる機会も多いです。学校によっては写真の活動をしていたり、写真少年団というものが立ち上がったり、そういう文化にふれる機会というのが他の町に比べると、どこと比べているわけでもないですけれども多いのではないかと思います。

(森) 町のサイズ感がいいのかなと思います。人口8000人ぐらいで、自分が何をしているのかということを町の誰かがちゃんと見ていてくれるみたいな。そういうのを感じられる距離感、サイズ感が癒されるところ。札幌市内で全校生徒が数百人ほどの校内で何をやっても自分を注目してもらえない子が疎外感を持ってしまっている例というのは都会になればなるほど多いのでしょうが、この町でお話を聞いているとそういう感じは少ないのかな。常に自分の良いところを誰かが見てくれていると信じられそうというか。見てくれているかどうかはわからないけれども、見てくれていると信じられそうという、そういった感覚を持って大人になってくれたらいいですね。

(轡田) そうですね。見守られている感はすごくあると思いますね。

(森) ある時に自立してくれるだろうけれども、今の子どもたちが自立する時どのようにこの町全体をしていくのかしらね。

(菊地) それは非常に最近よく考えますね。
東川の町を誇りに思ってくれる子どもたちが増えるということがたぶんこの町の将来にもすごくつながると思うのです。最近聞くことですが、私も東川町生まれです。昔は大学に行ったりしたら「どこの出身だ」と言われたら「俺は旭川の隣の町だ」と、東川町とは言わないのです。どうせ言ってもわからないから。
ところが、今の子たちは札幌でも東京でも出て行くと「北海道東川町だ」と言うというのです。それが自分たちの住んでいる町の誇りの表れなのではないかなという気がします。

(森) 説明しなくても、ブランドとして認知されているところが大きくなっているのかしらね。

(菊地) 聞いたところによると、ある親御さんの話ですが、「私はこう言ってあげたんだ」という子どもの話をしてくれたのですけれども、「東川町って、それはどこにあるの」「えっ、北海道の東川町を知らないの」と言い返したというのです。自分の東川町が表に出ているということを子供達は誇りに思っている。我々の時代と違って、東川町という言葉を出して理解してもらおうとする、ということではないかなと思うのです。

(森) くどくど説明しなくても「知らないの?」という、ちょっと見栄を張れるってすごいね。

(轡田) わたしたちのイベント出店でも回を重ねると受け止められ方の違いがより顕著に分かりますよね。1年目よりも2年目のほうが、今回3回目の出店では「ああ、あそこの東川町から来たんだ」という感じでお客様から言ってもらえるので。

(菊地) 実は全然知られていないのですけれどもね。

(轡田) そうなのですか。すごい知られてるかと思って聞いていた。

(森) 実は全然知られていないのですけれどもね。

(轡田) そうなのですか。すごい知られてるかと思って聞いていた。

(森) どうなのでしょうかね。北海道の中では米どころとして知られていますね。「きらら397」でしたか。

(菊地) それは、もう20年、25年ぐらい前に。

(森) あの袋を初めて見た時には「なに?この漫画チックなイラスト」と思ったけれども、いただいて帰りました。ここの農家さんがつくった「きらら397」。

(菊地) あれから始まったのですからね、北海道のお米がおいしいということは。

(森) ブレンド米ではなくて、いわゆる自家製米というのですか。ホクレンなどで売っているのはブレンド米だけれども「これはうちの田んぼだけの米だから」と言われて、これが北海道米の自信作「きらら397」という米なんだと味わいました。

(菊地) 東川町の農家の人たちは東川米に対する自負というのは、すごく強いと思います。自信をものすごく持っています。


次回7回目は“東川町民のサポートマインド力”というテーマでお話いただきます。


《THE座談会in東川町の掲載記事は下記からご覧いただけます》
(1)ゲスト紹介
(2)なぜ、東川町へ向かったのか
(3)東川町の暮らしづくり
(4)写真という文化によるまちおこし
(5)東川町というまちのブランドについて
(6)子育てサポートもブランド力
(7)東川町民のサポートマインド力
(8)まちのジャストサイズ〜現状維持が目標
(最終回)東川スタイルはコミュニティから生まれる