一般社団法人 北海道まちづくり協議会

特集記事 THE座談会

2020年8月6日(木)

THE 座談会 in 東川町(最終回)〜東川スタイルはコミュニティから生まれる〜


● 東川スタイルはコミュニティから生まれる —————————————————

(森) 轡田さん、この町でこれからお店を大きくしていく、ビジネスを大きくしていくというところもあるでしょうが、東川町に本店に置いているということを、個性というか、どういった特色をこれからの売りに繋いでいこうと思いますか。

(轡田) 先程お二方も言っていただいているように東川町の魅力というところでは、旭川や首都圏に近いという利点がとても大きな特性だと思います。我々の商材というものは、本当にインターネットも含め地元の方も含め、色々な方々にアプローチできる作品なので、そういうコーヒー豆の持っている豊かな可能性をたくさん皆様に知っていただくということが一番大事だと思います。そういう部分では、空港が近い、東京や都心部が近い、世界アジア圏中心にも近いということで販路が色々な形で拡大できるというところでの役割が今後の私達の課題になってくると思います。今はネット環境やビジネスというものを中心に、もっと色々な地域の方々に東川町の持っている水の資源を基にしてここの独自性のブランドというものをどんどん発信できるような企業体にしていきたいなというふうには思っています。

(森) 今はコーヒー豆を中心でお商売されていますね。豆以外の商材にも興味を持って広げていこうと考えていらっしゃるのですか。

(轡田) もちろんそうです。これだけ可能性豊かな場所がありますので、コミュニティの場という部分では、旭川の方にも駅前という形の徒歩2分圏内です。そういう部分での流通だったり、そういう商業や色々な方々にアプローチできるところもあると思います。 東川町は、本当に10分圏内で空港、2時間経てば東京にいるというような状態なので。

(森) 食がベースですか?

(轡田) 飲食住をベースにしていきたいと思っています。今、敷地内にも衣服を扱っている建物があります。オイルコというブランドなのですが、そちらのデザイナーさんと一緒に独自性のあるブランドをつくっていきたいとも思っています。今一番取り扱っている食の部分では、コーヒー豆というものはどこでも手に入るものではなく、道北ではうちでしか手に入らない豆というものもありますので、そういう点も強調できるようにコーヒー豆売を母体としてやりたいと思います。

(森) ひとつの東川スタイルという感じですか?

(轡田) そんなことは、めっそうもないのですが、東川スタイルの理想に惹かれて来ている方もたくさんいると思うので、その理想的なものではなく現実的なことが私たちの生活を介して感じていただけるようなライフスタイルをご提供できる、という部分での住むというところを今後テーマに、不動産にしてもそうだと思いますが、誰でも手に入るものではないので、一生の買い物をするというところで我々がお手伝いできる現実性的なところのアプローチも、うちはヨシノリプランニングという名前になりましたので、ご提案していきたいとは思っています。

(森) 東川町というまちで得られるライフスタイルということですね。

(轡田) これは、時間をかけないと得られない情報だと思いますので、私達は東川町に根付きながらコーヒーという媒体を使ったコミュニティをどんどん発信していけるように今は考えております。

(菊地) 模範的な東川スタイルですね。モデルケースです。

(森) ライフスタイルという面では色々な繋がりの要素が多い町ですよね。食と心地よい生活、住環境に関わるものもあれば、自然環境も豊かだし、山も登れるし温泉にも入れるし。
佐々木さん、お話を聞いてきて、他のまちでこういうところは大いに参考にしてもらいたいなということはありましたか。

(佐々木) 最初の方で文化の話をしたと思うのです、色々あったけれども続けてきたという。
東川町は30年スタートダッシュが早かったという話しをしたのですけれども、今から始めれば次の30年後にはその町だってなにか、人口増ではないとは思うけれども維持であったり。

(森) 始めるということが重要なのですか。

(佐々木) 始めて維持していくということが大事かなと思います。先程、東川のジャストサイズ、現状維持というお話しが出ましたが、どうしても日本全体の人口も減っていくという中で維持は非常に難しくて、他の町では必ず減少状況からのスタートになります。

(森) どのまちも減少の図式を書いています。

(佐々木) その減少の加速度をどう抑えるかというところが重要なのかなと思います。そのポイントとして“文化というキーワード”と“住民のサポート”というところと“呼び込み力”というところが、三すくみであったり、色々な要素が絡み合って加速度をおさえられるのかなとは思います。実際にどうしていかなければいけないかということは研究していかないといけないかなと思っています。ただ、北海道は、そもそもポテンシャルが高いので、どうにかなると個人的には楽観視しているところはあります(笑)。

● まちの元気を持続可能なものにするために —————————————————

(森) 最後の質問になります。最近、東川町の国際的な活動とかをニュースで見ましたが、先程も触れていたと思うのですが、未来を担う人達にみなさんがどう何を繋いでいきたいのか。こうだったらいいなみたいなところを、今までも色々な事柄で表現してくださったのですけれども、締めくくりとしてお三方にそれぞれ伺いたいと思います。
轡田さん、佐々木さん、締めくくりで菊地さんという順でお願いします。

(轡田) 先程もお話したように、一番はここの町が良い形で持続可能ということ。本当に理想的って一番難しいと思うのですけれども、コツコツ毎日の生活を豊かにできるように日々色々と自分の中で自主的に何か行動して、自然環境にしてもそうですし経済を潤すための色々なことに対して意識を高く持つこともそうだと思うのですけれども、それは誰かと会話を発しないと気付けないことや、独自の情報だけではなく色々と周りの頼もしい大人たちにお話を伺うチャンスも必要だと思うので、そういう存在に自分たちがなれるように、コーヒーという媒体が私達にはあるので一杯のコーヒーから広がっていく世界観をみなさんとコミュニティで広めていきたいなと思ったりします。独自の文化が形成できたらいいなと思います。

(佐々木) 東川町は非常におもしろいのですけれども、ちょっと見ない間に超おもしろいことが起きていて。人口は現状維持なのですけれども、やっていること自体は現状維持ではなくて、おもしろいことを常にやっていっている、そういうスタンスが必要なのかなと。それは、役場だけではなくて住んでいる人も常に楽しく移り変わっていくということが重要になってくる。そうすると、より良い東川が将来、それこそ30年後にまた新しい東川ができているのかなと思います。是非是非おもしろいことを続けていってほしいなと外の目から思っています。

(森) というメッセージをいただきまして、菊地さんお願いいたします。

(菊地) 色々あると思うのですけれども、先程も触れましたが、東川町で育つ子供達、その子供達が将来なにを思ってここで育って、将来大人になった時に東川町、いわゆる故郷に対してどういう思いを持つかということなのではないかという気がします。
例えば、大学に行く時には外に出るわけであって、優秀な人材ほど東京に残って仕事をすることが普通だと思うのです。その時に東川町のために何ができるのかということを東京で考えてくれたら、それはすごく力強い応援者であって関係人口にもなる。その思いがその延長で東川に戻ってきてなにか役に立とうという、親がいたとしたら戻って自分の能力を活かそうとする子供達が出てくるとか。
そういうことを見据えて東川町は今なにをやらなければいけないのか、ということを考えれば自ずと子育て環境だったり教育だったり、子供達にとって何が必要かということをやらなければならないのだと思うのです。そういうことを積み重ねて将来もっとちゃんと、住民一人一人が東川町で自信をもって生活できるような環境をつくっていけるようにしたいなというのが、行政側からすると、そのために何をすべきかということをこれからも考えていきたいと思います。

(森) ありがとうございます。今日は、ずっと前に建てられた役場をみて、次に建てられた文化ギャラリー、最後に新しい施設「せんとぴゅあ」を見て、その時代その時代の流行のスタイルを非常にうまく取り入れてきたのだろうなと思います。数十年前ここの役場を見たときに、なんてバブリーな役場だろうと思いました。あの時代は、あのバブリーな建物が町民にとっての元気の形だったのだろうと思う。文化ギャラリーは、その当時、コンクリートの打ちっぱなしが流行っていた。うちの町にも現代的な建物ができた。今日行った「せんとぴゅあ」も景観に合う高さでしつらえて、質感も木を活かしながら、展示も非常にスマートに行われていました。
そういった時代時代の新しいものを取り入れてきたように思います。最初は町民も文化でまちおこし「写真の町」ってなんだ?というふうな、わけのわからないところを建物を含めて形でちゃんと見せる、というところが役場の方々もすごく学習して、時代に沿った洗練された感覚を磨いてきているのだろうなと思います。そういう意味では佐々木さん、今後も目が離せない。

(佐々木) そうですね。近くからずっと見ていたい。

(森) 次に新しいものができる時には、何を先取りするんだろうと。

(菊地) これをやったらいいのではないかという提案をしてください。

(佐々木) それをしていきたいのですけれども、まだできていないので。

(菊地) 東川だったらこれじゃないの、これは間違えているよとか。

(森) 誉めてばかりでもだめなんだよね。今日は誉めちぎっていますけれども、けなしても話は広がっていかないので(笑)。

(轡田) 先程、菊地さんから名言が出ていましたよね。

(佐々木) 悩まないと。

(轡田) 悩まないと発展しないって。

(菊地) そんなこと言いましたっけ。

(轡田) 大事な言葉だなと思って。苦しまないと悩まないと。

(菊地) 今日はいい話ばかりしているけれども、いい話ばかりではないですよ。

(轡田) 大事な言葉だなと思って。苦しまないと悩まないと。

(森) 一口に「写真の町宣言」から35年と言っても、35年は葛藤と工夫の年月でもありましたね。
今日は、どうもありがとうございました。

写真左から東川町役場・菊地さん、ヨシノリコーヒー・轡田さん、道総研・佐々木さん、司会・当協議会森


《THE座談会in東川町の掲載記事は下記からご覧いただけます》
(1)ゲスト紹介
(2)なぜ、東川町へ向かったのか
(3)東川町の暮らしづくり
(4)写真という文化によるまちおこし
(5)東川町というまちのブランドについて
(6)子育てサポートもブランド力
(7)東川町民のサポートマインド力
(8)まちのジャストサイズ〜現状維持が目標
(最終回)東川スタイルはコミュニティから生まれる